マチルダ/花売り
MATILDA / flower vendor
花売りの少女マチルダは、ひとりぼっちで花を売り歩く、かわいそうな女の子。
その哀しげな眼差しに見つめられると、不幸になると噂されているため、
街の人たちは、彼女に近寄らないようにしている。
好き:墓地、夜の星
友達:てんとうむし
STORY
マチルダは孤独な女の子。
パパとママは、マチルダが小さい頃に事故でなくなり、彼女は腰の曲がったおばあちゃまに育てられた。
「さぁマチルダ、パパとママに会いに行くよ」と、おばあちゃまに連れられて、マチルダは毎日お墓に通っていた。
お墓は街のはずれにあるため、腰の曲がったおばあちゃまと小さなマチルダは、家とお墓の往復だけでほとんど一日が終わっていた。
マチルダにとって、お墓はパパとママに会える唯一の安息の地であった。
ある日、お墓に咲くきれいなお花に出遭った。
「ねえおばあちゃま。どうして灰色の場所に、あんなにきれいなお花が咲くの?」
「それはね、パパとママが、マチルダが1人でも寂しくないようにって咲かせてくれているんだよ」
マチルダは、お墓に咲くお花を見るたびにパパとママの温もりを思い出し、毎日少しずつ摘み取って、家に持って帰るようになった。
それからまもなく、たった一人の肉親であったおばあちゃまも病気でなくなり、マチルダは天涯孤独となってしまった。
他に頼る身寄りもなく、マチルダはパパとママとおばあちゃまのいるお墓で寝起きし、一人でお花売りをして生きていくようになった。
そんなマチルダを見た街の人たちは、彼女のことを、お化けや墓の使いなどと呼び、「マチルダと目があうと不幸になる」と、彼女に近寄らなくなった。
そんなマチルダのもとに、一匹のてんとうむしがあわられた。
マチルダは、チャッピーと名付け、たった一人の友達として慕うようになった。
チャッピーは、彼女のそんな心を知ってか知らずか、マチルダの周りを飛んだり、花にもぐって隠れたり、肩の上をよじ上ったりしながら、マチルダの近くに居続けるのである。
マチルダのパパとママのお墓は、街のはずれの森の中にある。
街から離れていけば行くほど、道の周りは寂しくなり、街灯の間隔も開き、途中からは真っ暗になる。
整備されていない土の道。道端には雑草が生えている。
そんな中を、マチルダは毎日お花をかかえ街に出ていき、お花を売るのだ。
帰りはいつも、夜の遅い時間。
真っ暗な道を歩く手助けをしてくれるのが、お月様とお星様の輝きだ。
そんなマチルダが、いつも寄り道していく場所がある。
街を抜け、森へ続くあぜ道をとことこ歩いて帰る道の途中にある、ゴミ捨て場だ。
ゴミ捨て場といっても、街の悪い人達が勝手にゴミを捨てている、いわゆる不法投棄の場所。
ものすごい量のゴミが、おおきな山のようにそびえ立っている。
マチルダのお気に入りは、3ヶ月前にすてられていた赤い皮の椅子。
座面の皮は少し破れているけれど、昔パパとママと3人で暮らしていた頃に使っていた椅子に良く似ているので、マチルダはその椅子が大好き。不法投棄のおかげで、3ヶ月前には一番手前にあった椅子が、今では山の中腹まで追いやられてしまっている。
マチルダは、山をよじのぼり、毎日その椅子に腰掛けて1日の報告を、天国のパパとママとおばあちゃまにするのが日課になっている。