やや/中学生
YAYA / Junior high school student
学校ってダサイ。だから制服も着ない。指定のカバンも持たない。
同級生はみんな子供。だから仲良くしない。笑顔ふりまかない。
目がコワイとか、くちびるが腫れてるとか、不気味だとか言って、
クラスメイトは攻撃してくるけど、泣いてなんかあげない。
好き:秋の空
嫌い:愛想笑い
宝物:ドクロのオカリナ
STORY
僕のクラスには、ちょっと変わった女の子がいる。名前はやや。
ものすごく太っているとか、ものすごく背が高いとか、外国人だとか、そんなんじゃない。
うーん、ひとことで言えば、上思議ちゃんってとこかな。なぜかって?ややはみんなと同じことをしないからだよ。
学校で決まりの制服は着てこないし、上履も履かないし、指定のバッグも持たないんだ。そりゃ目立つよ。学校のどこにいても注目の的さ。
上級生にも、先生にも、同じクラスの意地悪な女の子からも目をつけられてるくらいだからね。
僕なんて、上級生とすれ違うとき、制服の中のカラーシャツが透けないように、姿勢よく歩いちゃうのにさ。
でも、ややは誰に対しても臆することがないんだ。今までに何度も上級生に呼び出されたり、文句を言われたりしてるみたいだけど、全然変えようとしないんだから。あの気合いには驚いちゃうよね。
ややのママも、何度か学校から呼び出しがかかってるんだけど、一度も来たことがないんだ。
なんでも、ややのママは世界的に有名なシンガーで、いつも世界中を飛び回っているから、なかなかつかまらないんだって。
意地悪な子達は、絶対うそよ!って信じようとしない。いつだったか、クラスの怖い女子達がややの机の周りに集まって、「あんたのママ、本当は今も家に居るんでしょ?どうせ、顔出すのが恥ずかしいんでしょう。ややのママだって言われるのがね!」「そうよそうよ。ややってうそつきねー」なんて、寄ってたかって言い出したんだ。僕は見てるだけでおしっこちびりそうだったよ。
でも、すごいことに、それでもややは物怖じしないんだよね。
何にも言わず、ただじっとリーダー格の子の目だけ見つめてた。顔色ひとつ変えず、ジーっとね。
そしたら、だんだん周りの子達が怖くなってきたみたいで、最後には、「ふ、ふん!なによ強がっちゃって。行くわよ!」だって。
ややは勝ったんだ。僕は、こっそりガッツポーズさ!
前々から、あの子達好きになれなかったんだよね。いつかこらしめてやろうと思ってたんだ。
でも、頭の中でだけ。本当にそんなことしたら、僕もいじめられそうで怖くて・・・。ああ、僕に、ややの半分でも勇気があったらな・・・。
その日の帰り道、僕だけの秘密の抜け道を通っていたら、どこからともなくオカリナの音色が聞こえてきたんだ。
いつもはめったに人が通らないような場所だったから、音がしたことにびっくりしてさ、どこからかなって、
おそるおそるあたりを見回してみると、丘の上で、ややが胸元のドクロを吹いていたんだ。まっすぐ、夕日を見て。
僕は、あわてて茂みに隠れた。なんでだろ、別に隠れる必要もなかったのに。
なんだか、見てはいけないものを見てしまったような気がして。それに、ややも、見られたくないって思っているような気がして。
僕は、少しの間、ややの音色に耳を傾けていた。
その音色はひどく切なくて、ややの表情は全く変わっていないのに、なぜだか、僕にはややが泣いているように見えたよ。
僕はややから目が離せなくなった。ただ、ひたすらにオカリナを吹くややから。
夕日が沈むと同時に、ややはオカリナを吹くのをやめ、ゆっくりと家のある方に向かって帰っていったんだ。
今まで僕は、ややは何にも感じない子なんだって思ってた。
変な子だとも思っていたし、頭がおかしいんじゃないかとさえ思ったこともあるよ。
だって、僕なら泣いちゃいそうな出来事を何度も受けても、全然顔色変えないし、先生に怒られたって、廊下に立たされたって、一人で帰ったって、何にも言わず、ただ、あの鋭い目でにらみ返すだけだったんだから。
でも、あのオカリナを聞いて、もしかしたら違うんじゃないかって。
ややも、傷ついているんじゃないかって。そう思ったんだ。
ややは、「辛い」なんて一言も言わないけれど、「助けて」とも言えないのかなって。
なんだか、ややが帰ってからも、目を閉じるとあのややの横顔が浮んできて消えないんだ。
頭の中は、オカリナの音色でいっぱい。
僕、どうしちゃったんだろ。
夜寝るとき、僕は明日頑張ることを1つ決めて寝るようにしているんだ。
朝ごはんを残さないとか、犬の散歩をサボらないとか、忘れ物をしないとかね。
明日は、いつもよりちょっぴり勇気を出して、ややに「おはよう」って言おう。
きっと、ややはあの強い目でキッとにらむだろうけどね。
絶対、言うんだ。「おはよう」って。